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「このあたりは朝方とても冷え、真冬には氷点下になるのですが、この家では床暖房をつけなくても室内が二ハ℃以下になったことはありません。
朝と昼で外気温が一五℃くらい変化しても、室内は一、二℃しか変化しません。
床暖房は約四0から五0℃に設定したお湯を鋼管で流す構造で、低温でジワジワと床や躯体を温める方式です。
それでも、つけているのは真冬でも朝一、二時間、夕方家に帰って来る前に一、二時間程度で十分ですね。
床暖房のランニングコストは月一万円前後です。
真夏も快適です。
クーラーはありませんが、家に入るとひんやりしています」光熱費の話が出ましたが、ユニークなのは「風車」があることです。
風のエネルギーを利用して自家発電し、太陽電池による電気も含めて外まわりの電気エネルギーを部分的にまかなっています。
たとえば、屋上には菜園やガ−デニングの広場があり、これには建物に降り注がれる真夏の太陽熱をさえぎる役割もありますが、そうした植物にあげる水は屋上に設置された雨水タンクを使います。
そのタンクに水を上げるポンプなどの電力の一部に、自家発電による電気を使っているわけです。
「ケミカル会社の元社長さんという方が、あるシンポジウムでこんなことをおっしゃっていました。
いま先進国の人口は世界の一六%だそうです。
この一六%の人が約八割から九割の石油エアコン設備はなく暖房は床暖房だけです。
を使っているわけです。
ただし、ものすごい勢いで成長している中国が先進国に仲間入りすると、先進国の人口が五0%になります。
そこまでいかなくても、仮に中国人の生活レベルが現在の日本の半分のレベルになったとして単純にシミュレーション計算すると、いまバレル三0ドルの石油の価格は一00ドルを超えるのだそうです」。
実際にはそうなる前に何かが起こるのでしょうが、その過程で先進国の住まいはできるだけエネルギーを使わなくてすむものに変わっていかざるを得ません。
すでにドイツやスウェーデンでは、省エネ住宅に国をあげて取り組んでおり、外断熱をはじめトータルなエコ住宅を現実のものとしつつあります。
「日本だけ、いつまでも内断熱というわけにはいかないのは目にみえています。
これからは外断熱はもちろん、おそらく燃料電池など新しいエネルギーがどんどん出てきて、家のエネルギーに対する考え方が相当変わってくると思います。
それは、今から見越しておいたほうがいいと思いますね」。
住まいの建物は少なくとも一00年はもたせなければ環境負荷が大きくなるばかりですから、どんどん長寿命化が求められるようになるでしょう。
その建物が、現在の日本のほとんどのマンションのように、膨大な暖房・冷房エネルギーを必要としているようでは話にならないということになるでしょう。
いまどう建てるかは、特にコンクリート造建物では非常に重要な分かれ道になるということです。
Fさんは住まいの専門家ではないし、設計士でもありません。
しかしエコロジカルな住まいや生き方に関連する知識も豊富でした。
最後に、私の印象に残った話を紹介しておきましょう。
これは、中国の話をされた、あるケミカル会社の元社長さんの、また別の話です。
「これからの生活は、リサイクルではなく、まず省エネだとおっしゃっていました。
無駄なものは使わない。
これが第一で、二つ目はリユ−ス。
なぜリサイクルではなくリユ−スかというと、リサイクルというのは現状ではほとんど成り立ってないからです。
たとえばベットボトルのリサイクルは推奨されていますが、ほとんどのプラントは税金でつくられています。
そのコストが考えられていない。
ベイしていないわけです。
ベットボトルでいえば、同じペットボトルや二00回使ったほうがいい。
ドイツでは、三、四回使っているそうです。
日本はすべてリサイクルにまわして、結局エネルギーを無駄づかいしている、というのです。
たとえば、借りるということを、もう少し真剣に考えたらどうですかと言われました。
そういうシステムを作ればもっと安くすむし、シンプルになるんじゃないですかと、彼は言っていました」日本の建築業界で続いてきたビルのスクラップ&ビルドには、省エネはもちろん、リユースの発想すらありません。
私たちが目指さなければいけないのは、建てるのであれば省エネの、一00年以上もつ建物であること。
そして改築や建て直しを考えているような建物については、できるかぎり長くリユ−スできるような改修を第一の選択肢として考えてもらえるようにすることだと考えています。
マンションを「使い捨て」にしないことが人も社会色豊かにする歴史的に木造家屋に住みなれてきた日本人にとって、コンクリート造の集合住宅であるマンションは「終の住処」としてイメージしにくい面があります。
マンションは日本ではせいぜいもって四。
年程度の寿命ですし、さらに一局集中型の高度成長を遂げた日本の「土地神話」とも重なって、マンションに資産価値を見出すことはなかなかむずかしいのが日本人の感覚かもしれません。
しかしそれも、外断熱の良さが一般に知られていなかった時代までの話になるはずです。
建物の外側にすき間なく断熱材を施す外断熱の建物では、外気温の変化による躯体コンクリートの伸縮がほとんどなくなり、劣化がほとんど起きません。
このためある程度の規準以上で造られた建物は、少なくとも一0。
年はもっと保証されるほどの耐久性をもちます。
ただし、一00年以上もつのはあくまで躯体であって、水道管やガス管、あるいはサッシなどは三0、四0年経過すればどうしても交換の必要があります。
私たちが規準としている外断熱の建物では、設備のリニュ−アル工事が簡単に行えるよう、あらかじめ設計されることが求められています。
したがって従来のマンションのように「三0年たったら取り壊し」ではなく、新しい設備に交換するだけで新品同様の住宅性能で住みつづけることができるわけです。
日本では現在、中古マンションは売れたとしても二束三文です。
一九七0年代から外断熱の建物が建ちはじめたドイツでは、逆にマンションは年代を経るほど値も上がります。
それは古い建物のたたずまいを大切にするドイツ人の好みだけでなく、マンションの躯体がしっかりしていて、その断熱性能がまったく低下していないことが主な理由でしょう。
日本において土地の資産価値ばかり高いのは、マンションの耐久性があまりにも短いためでもあります。
高度成長期には景気のためには無駄づかいも必要といわれましたが、それにしてもビルのスクラップ&ビルドほど無駄なことはありません。
残骸となった大量のゴミは、すでに捨てる場所もなく、また新たに建てるために地球環境を犠牲にしなければなりません。
都市は無残な姿となり、額廃し、社会全体が貧しくなっていくのです。
ヨーロッパの古い都市を訪れたとき、そんな日本が悲しくなってしまうのは決して私だけではないでしょう。
コンクリート造の建物は、一00年もつのが世界の常識です。
これを社会のストックとしてたくわえることは、親も子も孫も住まいのために節約してせっせと貯蓄しなければならない、日本のおかしな問題点を改善することにつながります。
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